神道の葬儀は神葬祭と呼ばれ、教祖がおらず経典も存在しないため、神社や神職によってお葬式の流れや内容が異なります。
しかし、基本的な流れはほぼ変わらないため、神葬祭で失敗やマナー違反を防げるよう、本記事では一般的な神道の葬儀の流れについて解説します。
神道の葬儀に関して、気をつけるべき注意点や、よくある質問についてもまとめてご紹介しますので、どうぞ参考になさってください。
神道の葬儀(神葬祭)の流れ
神道の神葬祭の流れについて、時系列に沿って、次の順序で解説します。葬儀はあらかじめ流れを知っておくと、失敗やトラブルを防ぎやすいため、事前に把握しておきましょう。
- ①亡くなってからお葬式まで
- ②1日目:お通夜(通夜祭・遷霊祭)
- ③2日目:葬儀・告別式(神葬祭・葬場祭)
①亡なってからお葬式まで
亡くなってからお葬式を行うまでの事前の流れについて解説します。
ご臨終
病院などで死亡が確認されたら、速やかに葬儀社へ連絡をして、ご遺体をご自宅や斎場などへ搬送する手配をします。
この際、葬儀社へ神道のお葬式を行うことを伝えておくと、神葬祭の準備がスムーズです。
帰幽奉告(きゆうほうこく)と神棚封じ
ご自宅に神様を祀る神棚や祖先を祀る祖霊舎(それいしゃ)がある場合、家族の死を報告する帰幽奉告を行います。
その後、神様や先祖の霊が死の穢れに触れないように扉を閉め、前面へ白い用紙を貼り付けて、忌明けとなる五十日祭まで封印します。
枕直しの儀
枕直しの儀とはご遺体を安置することをいい、神道では北の方位が上座と考えられているため、北枕にして安置して、白い布で顔を覆います。
ご自宅へ安置する際は生前に利用していた布団を使用しても問題ありませんが、清潔に洗濯してある白い無地のシーツや布団カバーを利用しましょう。
枕元に悪霊から故人を守るための守り刀を背がご遺体側になるように置き、枕飾りとして、八足机へ榊・燭台、中央に配置した三方へ洗米・お神酒・塩・水をお供えします。
柩前日供(きゅうぜんにっく)の儀
ご自宅へ安置する場合、葬式までの期間は柩前日供の儀として、朝夕に故人の好物など、生前と変わらぬ食事の常饌(じょうせん)をお供えし、二礼二拍手一礼で礼拝します。
故人を礼拝する際は「忍び手」とし、音を鳴らなさい拍手をするように注意しましょう。また、神社によっては二礼四拍手一礼の場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
納棺の儀
神道では、ご遺体を湯灌(ゆかん)や清拭によって清潔に清め、死に化粧をして、白の小袖などを着用させてから棺に納めることが一般的です。
また、棺は神祭具である糸の字の形をした紙垂(しで)の付いたしめ縄で周囲を巻いて装飾します。
②1日目:お通夜(通夜祭・遷霊祭など)
1日目は仏教でいうお通夜にあたり、神道では通夜祭と呼びます。通夜歳に続いて遷霊祭という儀式を執り行います。
通夜祭
仏式の葬儀ではお焼香を行いますが、通夜祭では参列者が『手水の儀(ちょうずのぎ)』によって身を清め、玉串を捧げる『玉串奉奠(たまぐしほうてん)』を行います。
玉串奉奠は、喪主→遺族→親族→参列者の順に霊前まで進み出て、『玉串』(紙垂を麻紐で取り付けた榊)を置く八足案へ手向けてから、忍び手で二礼二拍手一礼をします。
手水の儀と玉串奉奠の作法については、後ほど詳しくご紹介しますので、どうぞご参照ください。
遷霊祭(せんれいさい)
遷霊祭とは、故人の御霊を霊璽(れいじ)に移すためのとても重要な儀式です。
霊璽とは仏教でいうお位牌にあたり、式場内の照明を暗転し、真っ暗な状態で神職によって執り行われます。
直会(なおらい)
通夜祭が終わると、仏式でいう通夜振る舞いに相当する直会として、食事の席を用意し、神職や参列者へお礼のおもてなしを行います。
地域によっては、家族や親族のみが参加し、一般会葬者は招かないケースもあるため、あらかじめ葬儀社と打ち合わせをしておきましょう。
③2日目:葬儀・告別式(葬場祭・発柩祭)
2日目は仏教でいう葬儀・告別式にあたり、神道では神葬祭と葬場祭と呼びます。近年は遺族と親族、通夜祭へ参列できなかった人を招いて、少人数で行うのが一般的です。
葬場祭
葬場祭では手水の儀で身を清め、神職による修祓の儀や祭詞奏上などの神事と、参列者による玉串奉奠などを行う流れとなっています。
仏式の告別式と同じように、参列者による弔事の拝受や、弔電のご紹介などを行います。
発柩祭(はっきゅうさい)
火葬場へと出棺することを神道では発柩といい、故人との最後のお別れとして、百合や菊の花を棺へ納めます。
棺の蓋を閉めた後、正式には石で棺の釘打ちを行いますが、近年は省略するケースが多いです。
火葬祭
火葬場では、火葬をする前に火葬祭として、火葬炉の前にご遺体を安置し、お供え物を供えて、神職による祭詞奏上と、参列者による玉串奉奠を行います。
火葬が終わるまでには1時間前後を要し、火葬後は2人1組で遺骨の骨上げをして収骨します。
埋葬祭
近年は仏教と同じように、忌明けの五十日祭以降に納骨するケースが増えていますが、神道では火葬後すぐに埋葬するのがしきたりのため、火葬後に埋葬祭を行う場合もあります。
霊前祭(翌日祭・十日祭)
神葬祭後の法要を霊前祭といい、神道では神葬祭の翌日に翌日祭、命日から五十日祭まで10日ごとに霊前祭を行うのが正式な流れです。
仏式でよく行われている初七日法要のように、十日祭を神葬祭の当日に繰り上げたい場合や、ほかの霊前祭を省略したい場合は、神職へあらかじめ相談しておきましょう。
帰家修祓の儀(きかしゅうばつのぎ)
火葬場から自宅へ戻ったら、家に入る前に神職によるお祓いを行い、手水の儀と清め塩によって身を清めますが、斎場で葬儀をする場合は式場で執り行うケースもあります。
清め塩は足元に軽く振りかけるようにするのが一般的となっていますが、本来は、家族へ胸・背中・足元の3ヶ所に振りかけてもらうのが正式です。
帰家祭(きかさい)
帰家祭とは、神葬祭を無事に終えたことを神様へ報告する儀式のことをいい、神職からの祭詞奏上や参列者による玉串奉奠などを行います。
後飾り祭壇を配置して、霊璽・遺影・遺骨を安置し、榊・燭台と、洗米・お神酒・塩・水をお供えします。
直会
一連の儀式が終了したら、仏式の精進落しに相当する直会を執り行い、仕出し料理などの食事を振る舞います。
神道の葬儀(神葬祭)で気をつけるべき3つの注意点
神道の葬儀では、気をつけなければならない3つの注意点があるため、分かりやすく解説します。
- ①2つの作法を習得しておく
- ②宗教用語に注意する
- ③数珠を使用しない
①2つの作法を習得しておく
神道の儀式には特徴があり、次の2つの作法を習得としておくことがとても大切です。
手水の儀(ちょうずのぎ)
手水の儀は、葬儀のみならず、神社を参拝する際に、身を清めるために行う神道特有の儀式のため、ぜひ正しい作法を覚えておきましょう。
引用:神社参拝の作法 手水の仕方(東京都神社庁 公式チャンネル)
玉串奉奠(たまぐしほうてん)
玉串奉奠も葬儀だけではなく、神事や式典で行われる神道独自の儀式のため、併せて作法を学んでおくと良いでしょう。
②宗教用語に注意する
神道の葬儀では、仏教用語の「成仏」「冥福」「供養」や、キリスト教用語の「天国」という言葉を使用しないように注意しなければなりません。
③数珠を使用しない
神道の葬儀では数珠を使用しないため、仏教の方が参列する場合には持参しないように注意しましょう。
神道の葬儀(神葬祭)についてよくある質問
神道の葬儀についてよくある質問をまとめてご紹介しますので、気になる項目があればぜひご確認ください。
神道の葬儀での挨拶の仕方は?
他の宗教用語を避け、喪主や遺族側なら「ご会葬いただきありがとうございます」、参列者なら「この度はお悔やみ申し上げます」と、簡単な言葉で構いません。
また、忌み言葉を避けるのがマナーで、「死ぬ・別れる」などの不幸を表す言葉や、「たびたび・いろいろ」などの重ね言葉、「引き続き・追って」などの繰り返し言葉を避けます。
神道は喪中に神社を参拝してはいけないの?
葬儀後は忌明けの五十日祭までは、お正月の初詣であっても神社への参拝は控えますが、五十日祭が過ぎれば喪中であっても神社へ参拝をしても問題ありません。
なお、神棚のお神札は毎年新しいものに交換することが正しいマナーのため、新年を迎え、五十日祭を過ぎたら新たなお神札を授かり、神棚にお祀りしてください。
神道で用意するお花の種類は?
神道では榊を重視しているため、神前には榊のみとし、祖霊舎や神徒壇などへはその傍へお花を飾るようにすると華やぐでしょう。
基本的には榊をベースとし、赤など華美な色合いのお花を避け、白い百合や菊、黄色や薄いピンクのカーネーションなどをアレンジしてもらってください。
神道の法事・法要の日程はいつ?
神道の法要は霊祭、年忌法要は式年祭と呼ばれ、忌明けとなる五十日祭、初めてのお盆となる初盆祭、100日祭、以降は一年祭などを行い、満50年目となる五十年祭が弔い上げとなっています。
時期 | 名称 |
神葬祭の翌日 | 翌日祭 |
死後10日目 | 十日祭 |
死後20日目 | 二十日祭 |
死後30日目 | 三十日祭 |
死後40日目 | 四十日祭 |
死後50日目 | 五十日祭 |
死後100日目 | 百日祭 |
1年目の命日 | 一年祭 |
3年目の命日 | 三年祭 |
5年目の命日 | 五年祭 |
まとめ:神道の葬儀(神葬祭)の流れやご相談は弘善社の無料相談をご利用ください
神道の葬儀(神葬祭)の流れや注意点についてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。
- ・神道は家族葬を行うことが可能だが、神社や神職によって考え方が異なるため、一日葬などを希望する場合はあらかじめ神社や神主へ相談する。
- ・神道の葬儀では3つの注意点があり、手水の儀・玉串奉奠の作法を習得しておくことと、宗教用語に注意し、数珠を使用しないようにする。
弘善社では、北海道旭川市周辺の神道の葬儀を承っており、直会の仕出し料理や葬儀後に必要な霊祭・式年祭などのお手伝いも承っています。