こんにちは。
終活応援葬儀社の弘善社 代表取締役の太田弘文です。
前回、「おひとりさまの終活」の現状をお話しさせていただきました。
前回ブログ→
「おひとりさまの終活〜あなたの面倒はどなたがみてくれますか?」
前回の後半に、「生前の問題点」を少しお話しいたしましたが、今回はその続きと「死後の問題点」についてお話しさせていただきます。
「生前」の問題点~4つの自立とは?
さて、前回のおさらいですが、おひとりさまが一人で生活できうるには、次の「4つの自立」ができていることが前提だと思います。
①身体的自立:日常生活に支障のない足腰がある。(足腰が大丈夫)
②経済的自立:毎月の収支を認識している。(金銭的に大丈夫)
③生活的自立:掃除や洗濯、料理が自分で出来る。(お片付けが大丈夫)
④精神的自立:自分で判断し、自分で行動できる。(考えることが大丈夫)
上記のことは、普段は何気なく、不自由なく自分自身で行なっていることだと思います。
しかし、いざ病気や怪我をした時はどうでしょうか?
やはり一人では不自由なことってありますよね。
上記の「4つの自立」ができなくなった場合、どうしますか?
自分一人でできない場合、誰にお願いしますか?
そして「4つの自立」の中で、いちばん必要で重要な支援は④の精神的自立、つまり
判断能力喪失後の支援だと思います。(そのことについては後半に書きますね)
死後の問題点と生前にすべきこと
さて、まず考えなければならないのは、「誰に」「何を」やってもらうか、ということです。
この前のブログで、「おひとりさまとは、天涯孤独の人たちではありません」と書きました。
端的に言えば、おひとりさまの「死後のもろもろ」をやってくれる人がいない、ということです。
死後のもろもろ、つまり死後事務と言われるものは、葬儀や納骨から始まって相続・遺品整理、医療費の支払い、車や不動産の名義変更、健康保険や年金等の抹消手続き、ペットの処置などがありますが、「おひとりさま」とはこれをやってくれる人がいないということです。
いないのですから、例え遺言書を書いても仕方ありません。
遺言書の問題点
遺言書の話を少ししますね。
遺言書は生前の意思を残すのに有用ですが、完璧ではありません。遺言書で残せる内容というのは、
遺言で為し得る内容なのかどうなのか、民法的に言うと「法益の対象になり得るかどうか」、ということです。
遺言書における法益の対象は
①認知 ②後見人の指定 ③相続人の排除 ④遺贈 ⑤寄付行為 ⑥相続分の指定 ⑦分割方法の指定
と言われています。
これ以外に「付言事項」をつけることができますが、これは「法益外」です。
つまりですね、
遺言で出来ることは「財産をどうするか」という点だけであって、葬儀はこうしてほしいとかペットはこうしてほしいと書いたとしても、法的には一切何の意味もないのです。
誰が支援してくれる?~高齢者サポートの公的資源
では、行政や公的機関など公的資源のサポートはどうなっているのでしょう?
考えうるサポートととしては、社会福祉協議会、市区町村の高齢者窓口、地域包括支援センター、居宅介護事務所ケアマネ、ヘルパー、任意後見人、法定後見人、民生委員、ボランティアなどです。
公的な社会資源として、上記のようなものがあるのは事実ですが、この方々の活動が完全にストップするときがあります。
それは本人の「死」です。
なぜなら日本の法制度は生きている人が対象だからなのです。
本人の死後、本人の費用で上記の方々が支援をしたとすれば、善意であっても犯罪になってしまいます。
(つまり相続人であるか、死後事務委任契約を結んだ人のみできます)
イチバン必要なのは判断能力喪失後の支援~判断能力喪失の怖さ~
知り合いの税理士さんからこんな相談者さまのお話しを聞きました。
「私の親が認知症になってしまったのですが、今からできる相続税対策はありますか?」と。
現在の法律上、相続人が認知症、つまり判断能力を喪失してしまうと、残念ながら今からできる相続税対策は一切ないのです。
税金対策ができないのなら、まだいいです。
本当に怖いのは、不動産などの所有者が、認知症などにより自分の意思を示せなくなること。売ることも貸すことも取り壊すこともできなくなります。つまり誰も手がつけられなくなるということです。
大事なのはやはり「意思を遺すこと」
上記のケースでは、認知症になる前に相続に関することの意思を残せば何も問題はなかったのです。
さらに言うならば、意思を残さなければならないのは相続に関することばかりではありません。
終末期医療のこと、終の住処のこと、そして葬儀のこと、お墓のこと、お寺様のことなど。
これらに共通して言えることは、
「意思を遺すこと」の大事さなのです。
またまた今回も長くなってしまいました。
私の持論なんですが、
・「死後」のことより「生前」のことの方が整備されていない。「生前」のことの方が大事なのに。
・「生前」に決めたこと(自分の意思で決めたこと)があって、はじめて死後の諸々ができるのでは。
・生前の意思を残すことは大事。そして誰に意思を残すのかも大事。
だと思っています。
現在、公的資源のサポートもありますし、財産に関しては遺言書で残せます。
しかし、それだけでは不十分だと思うのです。
自動車や不動産の名義変更は誰にお願いしますか?
健康保険や年金の抹消手続きは誰にお願いしますか?
SNSのアカウント削除は誰にお願いしますか?
次回はそれらをカバーできる、「死後事務委任契約」についてお話ししたいと思います。