神道の葬儀は『神葬祭(しんそうさい)』と呼ばれ、仏教の葬儀とは大きく異なるため、あらかじめ必要な知識を備えておくことが大切です。
そこで、神道の神葬祭に関して、仏教の葬儀との具体的な違いや、知っておくべき作法マナーを誰にでも分かりやすく、ポイントを押さえて解説します。
葬儀費用やお布施・お香典、服装についてもご紹介していますので、遺族や親族、参列者の方々もマナー違反や恥ずかしい思いをしないよう、しっかりと正しい知識を習得しておきましょう。
神道の葬儀「神葬祭」とは?
神道の葬儀にあたる神葬祭に関して理解を深められるよう、始めに次の順序で知っておきたい基礎知識について解説します。
- ・神道の特徴は3つある
- ・神葬祭とは?
神道の特徴は3つある
神道は日本最古の宗教として、次の3つの特徴があり、日本人が培う精神や日常生活と密接な関係を保っています。
- ・教祖や経典が存在しない
- ・八百万の神を信仰する
- ・敬神崇祖を大切にする
神道とは、大和朝廷による国土統一とともに形成され、仏教が伝来した6世紀に名付けられた名称です。
出典:神道とは(神社本庁)
起源は諸説あり、縄文時代に遡るとも言われていますが、神々を信仰する風習は大昔から日本各地にありました。
開祖や教祖、経典がないことから民族宗教とも呼ばれており、地域や神社、神職によっても解釈が異なります。また、儀式においても流れや内容に違いがある場合があります。
海や山や岩石、天候などの自然現象に至るまで、あらゆるものに神が宿る『八百万の神 (やおよろずのかみ)』を信仰することも神道の特徴です。
さらに、神々を敬うとともに、祖先を崇拝する『敬神崇祖(けいしんすうそ)』の思想を重視し、代々にわたってご先祖様を大切にしています。
神葬祭とは?
神式のお葬式にあたる神葬祭とは、死による穢れ(けがれ)を清め、亡くなった故人に家の守り神になってもらい子孫を守るための神道特有の儀式です。
日本には、お宮参りや七五三や初詣など、伝統的な行事や地域の風習によって神社を参拝する習慣があるため、宗教別の信者数の調査結果は、神道が最も多い占率となっています。
- ・神道系:51.5%
- ・仏教系:43.4%
- ・キリスト教系:0.8%
- ・その他:4.3%
- 出典:宗教法人数の総括表 令和4年12月31日現在(文化庁)
一方で、お葬式に関しては約9割が仏式で執り行われ、神式は1割程度と少ないため、神道の神葬祭へ参列する機会はたいへん少ない傾向にあるのが実態です。
神道と仏教の葬儀の違い
故人を偲ぶために行われる葬儀ですが、神道と仏教では、以下のように儀式の目的や流れが異なり、さまざまな名称にも違いがあります。
神道の場合
- ・目的:故人の御霊に家の守護神となって子孫を護ってもらうため
- ・流れ:通夜祭→神葬祭(しんそうさい)・祭場祭
- ・祭司者:神職(神主・斎主)
- ・儀式:手水の儀(ちょうずのぎ)・玉串奉奠(たまぐしほうてん)
- ・祭司者へのお礼:御神前・御祭祀料
- ・最初の法要:十日祭
- ・忌明け:五十日祭
- ・依り代:霊璽(れいじ)
- ・依り代を祀る祭壇:祖霊舎(それいしゃ)・神徒壇(しんとだん)
- ・死後の名前:諡号(おくりな)・霊名
- ・お供えの食べ物:神饌物(しんせんもの)
- ・追悼儀式:霊祭(れいさい)
仏教の場合
- ・目的:故人が極楽浄土へたどり着くため(浄土真宗は阿弥陀如来へのお礼)
- ・流れ:通夜→葬儀・告別式
- ・祭司者:僧侶
- ・儀式:お焼香・数珠が必要
- ・祭司者へのお礼:お布施
- ・最初の法要:初七日法要
- ・忌明け:四十九日
- ・依り代:位牌
- ・依り代を祀る祭壇:仏壇
- ・死後の名前:戒名・法名
- ・お供えの食べ物:供物
- ・追悼儀式:法要
神道と仏教の違いで知っておくべきポイント
仏式の葬儀では、故人が極楽浄土へたどり着き、無事に成仏するよう祈ることが一般的ですが、神式の神葬祭は、故人に家の守り神になってもらうためのお葬式となります。
また、大きな違いは儀式にもあり、仏式では数珠が必要でお焼香を行いますが、神式では数珠を必要としません。
神道では、身を清めるための『手水の儀』や、『玉串奉奠』と呼ばれる儀式を行うため、正しい作法の手順を知っておくことが大切です。
神道の葬儀で知るべき2つの作法マナー
神道の葬儀で知っておくべき、大切な2つの作法マナーについて、手順を分かりやすく解説しますので、恥ずかしい思いをしないようにしっかりと習得しておきましょう。
- ・手水の儀
- ・玉串奉奠
手水の儀
神道では、葬儀のみならず、神社への参拝で鳥居をくぐった後にも手水舎で手水を行い、身を清めることが大切な作法マナーのため、手順を学んでおきましょう。
- ①事前にハンカチをポケットへ用意しておき、最初に軽くお辞儀をする。
- ②柄杓(ひしゃく)を右手で持ち、桶のご神水を満杯にすくい、1/3の量の水を左手にかける。
- ③柄杓を左手に持ち替えて、1/3の量の水を右手にかける。
- ④柄杓を右手に持ち、左の手のひらへ水を注ぐ。
- ⑤注いだ左手の水を口にふくんで、軽くすすぐ。
- ⑥1割程度の水を残して、再び左手に水をかける。
- ⑦柄杓の柄を両手で持ち、柄が下側になるように手前へ倒して柄杓を立て、残り水で持ち手の部分に水を伝わせて洗い流す。
- ⑧柄杓を伏せて置き場へ戻す。
- ⑨ハンカチで口元を拭いて、軽くお辞儀をする。
引用:神社参拝の作法 手水の仕方(東京都神社庁 公式チャンネル)
玉串奉奠
神道では、葬儀のみならず、神事や祭典でも玉串奉奠を行う機会があるため、手水の作法とともにスムーズにできるよう、手順をしっかりと学んでおきましょう。
- ①祭壇へと歩き、喪主や遺族に向かい一礼する。
- ②玉串を持った神職や葬儀スタッフの前に歩み寄って一礼する。
- ③右手の親指を玉串の茎の根元の下にして、上から被せるように持ち、左手を枝葉を下から支えるようにして両手で受け取る。(右手が下向き・左手が上向き)
- ④玉串を胸の高さに持ち、玉串を乗せる玉串案まで歩み寄って祭壇へ向かって一礼する。
- ⑤玉串の根元を持つ右手を手前にして玉串を縦にする。
- ⑥左手を玉串の根元に移動する。
- ⑦玉串の根元が祭壇側へ向くように右回りに半回転させて軽く頭を下げて玉串へ拝む。
- ⑧玉串の根元を祭壇に向けて玉串案の上に置く。
- ⑨祭壇のある正面を向いたまま一歩下がる。
- ⑩忍び手により、二礼二拍手一礼を行う。
- ⑪喪主や遺族へ歩み寄り、一歩下がってから一礼をして席に戻る。
神道の葬儀費用
葬儀社や地域によっても異なりますが、基本的に神道の葬儀費用は仏教と同等で、人数規模や飲食代・返礼品代によって、約50〜150万円と幅広い価格帯の費用相場となっています。
近年の葬儀は、家族や親族のみなど、少人数で執り行う家族葬が主流となっていますが、神道でも家族葬を執り行うことは可能です。
費用を削減したい場合には、事前の見積取得によって内訳と明細金額を比較し、追加費用の金額まで確認しましょう。
一方で、神職によって考え方が異なるため、1日で葬儀を執り行う一日葬などを希望する際には、あらかじめ神社や神主へ相談をして、トラブルにならないようにご注意ください。
神道のお布施費用(祭祀料)
神道でのお布施は『祭祀料』といい、神主や斎主などの神職へのお礼の費用は、1人の場合は20〜30万円程度、2人の場合は30〜50万円程度が相場となっています。
仏教とは異なり、神道では戒名料や法名料がかからず、仏式の葬儀と比較すると神式は安価な金額ですが、雅楽の演奏が必要な場合などは、人数に応じて祭祀料が必要です。
お布施袋は、外袋も中包みも白無地、黒白の結び切りの水引を選び、表書きは、「御祭祀料」もしくは、「御礼」「御祈祷料」とします。
祭祀料のほかに、御車代と御膳料(食事をしない場合)もお渡しします。白無地の封筒を2枚用意し、それぞれに「御車代」「御膳料」と書いて、神職1人につき各5,000〜1万円を包むのが相場です。
神道のお香典の金額相場
神道のお香典は故人との関係によって金額が異なります。相場は次のとおりとなっています。
- ・両親・兄弟姉妹:3~10万円程度
- ・親族:1~10万円程度
- ・友人・知人:3,000~1万円程度
- ・上司・同僚:5,000~1万円程度
香典は、蓮の花(仏式用)や百合の花・十字架(キリスト教用)が描かれていない、シンプルな不祝儀袋に納めます。水引は結び切りのもので黒白・双銀・双白から選び、表書きは「御霊前」「御玉串料」「御榊料」「御神餞料」のいずれかとします。
神道の葬儀の服装と持ち物
神道で着用する喪服や持ち物は、基本的に仏式の葬儀と同じものを用意すれば問題ありませんが、数珠は不要です。
喪主は、参列者より格式の高い良質な正喪服を選ぶことが最良で、参列者も光沢や艶のない漆黒の喪服を着用しましょう。
急な訃報により、お通夜の通夜祭に参列する場合でも、男性は作業着などの上着の下へ白いワイシャツと黒いネクタイを着用し、女性は黒・グレー・紺色などの服装が理想です。
持ち物は最小限に抑える場合でも、白や黒の無地のハンカチと、袱紗(ふくさ)に包んだお布施やお香典を忘れないようにしてください。
まとめ:北海道旭川市の神道の葬儀(神葬祭)は弘善社へお任せください
神道の葬儀(神葬祭)について、仏教の葬儀との違いや、知っておくべき作法マナーについて解説しましたが、まとめると次のとおりです。
- ・神道には「教祖や経典が存在しない」「八百万の神を信仰する」「敬神崇祖を大切にする」という3つの特徴がある。
- ・神道と仏教の葬儀では、儀式の目的や名称が異なり、神道では故人の御霊に家の守護神となって子孫を護ってもらうためにお葬式の神葬祭を執り行う。
- ・神道の葬儀である神葬祭へ参列する際は、「手水の儀」と「玉串奉奠」の2つの作法の手順を習得しておく。数珠は不要のため、持参しない。
弘善社は北海道旭川市の葬儀社として、神道の葬儀を承っており、神職のご手配や直会のご準備にも対応しています。