終活のこと

死後事務委任契約でできること10項目と注意点!おひとりさま向け終活

独身や一人暮らしの方は、自分の死後に対する不安が大きいと思いますが、生前のうちに『死後事務委任契約』をしておけば問題ありません。

ただし、死後事務委任契約では盛り込めない内容もあり、遺言書や他の契約が必要になるケースもあるため注意が必要です。

さらに、死後事務委任契約では、同時に準備するべきこともあるため、本記事で分かりやすく解説します。

身寄りのないおひとりさまをはじめ、家族を頼れない方や、親戚付き合いがない方はぜひご一読いただき、万全な終活のためにお役立てください。

死後事務委任契約とは?

公正証書

死後事務委任契約について、次の3つのポイントを押さえて解説します。

  • ・死後事務委任契約が必要な理由
  • ・死後事務委任契約をする方法と相手方
  • ・死後事務委任契約にかかる費用と期間

死後事務委任契約が必要な理由

死後事務委任契約とは、自分の死後に必要な事務手続きを法的に第三者へ委任して、代行してもらえる契約のことをいいます。

一人暮らしをしていると、死後の自分の遺体や遺骨が粗末に扱われないか不安な方や、自宅や私物がどうなるのか心配な方もいらっしゃるでしょう。

身寄りのないおひとりさまのご遺体や住まいは、身元引受人や保証人か、地域の自治体によって対処され、相続人のいない方の財産は国のものになってしまいます。

つまり、生前の終活によって、葬儀やお墓の契約を済ませていても、希望どおりに実行してくれる人がいなければ意味がなく、無縁仏として扱われる可能性があるため注意が必要です。

死後事務委任契約をする方法と相手方

死後事務委任契約書は、一般的に司法書士や弁護士などの法律事務所へ委任して作成してもらいます。

法的な効力を発揮するためには、公正証書として公証役場で内容の承認を受けなければならず、個人間の契約書の取り交わしのみでは実現できないためご注意ください。

死後事務委任契約を締結するのは、個人でも法人でも、信頼できる相手であれば誰でも構いません。 該当者がいなければ、司法書士・弁護士なら安心できるでしょう。

死後事務委任契約にかかる費用と期間

死後事務委任契約の費用は、基本的に公正証書遺言の作成と死後事務委任契約書の作成と報酬として、一般的に約15万円以上となっています。

具体的な費用は死後事務委任契約の内容に基づいて変動し、総額で100〜150万円程度となります。実行するために必要な費用は自分で全額負担しなければならないためご注意ください。

死後事務委任契約にかかる期間は、一般的に1ヶ月程度で、内容や事情が複雑な方は、3ヶ月程度要するケースもあります。

死後事務委任契約に向いている人

おひとりさまの高齢者

死後事務委任契約に向いているのは、次の6つのいずれかに該当する方です。

  • ・独身や子どものいない単身者の人
  • ・家族を頼れない人
  • ・親戚付き合いがない人
  • ・家族や親族に負担をかけたくない人
  • ・内縁や事実婚の関係にある人
  • ・自分自身の力で人生を全うしたい人

身寄りのないおひとりさまはもちろん、家族や親族を頼れない方や、周囲へ迷惑をかけたくないない方は、死後事務委任契約を検討すると良いでしょう。

死後事務委任契約で注意するべき6つのこと

6つの注意事項

死後事務委任契約では、気をつけるべき6つの注意点があります。

  • ・財産に関することは遺言書の作成が必要
  • ・生前の財産管理や身の回りに関することは契約できない
  • ・生前のうちに身辺整理をしておく
  • ・死後事務委任契約の詳細や希望はエンディングノートへ記しておく
  • ・葬儀や納骨先の生前予約をしておく
  • ・死後事務委任契約をしたら周囲に伝えておく

財産に関することは遺言書の作成が必要

死後事務委任契約では、銀行口座の解約や不動産の処分などの契約を行えず、財産や遺産相続に関する希望は、遺言書を作成する必要があるためご注意ください。

家族などの相続人がいない方や、法定相続人とは異なる相手に遺産相続したい方、親族以外の団体や個人へ財産を遺贈したい方は、遺言書を作成しましょう。

遺産相続の方法は基本的に4つあり、遺言書と遺言執行者の有無や、相続人全員で相続内容を決定した遺産分割協議書の有無によって、次のように相続方法が異なります。

遺言書 遺言執行者 遺産分割協議書 相続方法
× × × 法定相続人により配分
× × 遺産分割協議書どおり
× × 遺言書どおり
× 遺言執行者に基づく

遺言書には法的な効力があり、希望する相手に財産を相続することが可能ですが、保障された相続配分の遺留分を守る必要やルールがあるため、弁護士や司法書士へ依頼しましょう。

出典:知っておきたい遺言書のこと 無効にならないための書き方、残し方(政府広報オンライン)

弁護士や司法書士による遺言書の作成費用は、依頼先や相続財産の金額によっても異なりますが、一般的に5~20万円程度が相場です。

また、誰に何をどのように相続するのか、具体的な内容は財産目録を作成して添付する必要があり、財産目録の作成費用は5~10万円程度が相場となっています。

生前の財産管理や身の回りに関することは契約できない

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要となることへの契約です。生前の財産管理や身の回りに関する事項は、契約内容に含められないため気をつけましょう。

生前のうちから、介護が必要になった場合や認知症を患った場合に備えておきたい方は、生前事務委任契約や任意後見契約制度を検討するのがおすすめです。

生前事務委任契約とは、本人に十分な判断能力があるうちから、病院や介護施設などの手続きや、財産の管理と支払いを専門家が支援する契約となります。

一方で、任意後見契約制度とは、本人に十分な判断能力があるうちから、任意後見人となる人と委任する内容を決めておき、認知症や障害を患ったら任意後見人が代行する制度です。

前のうちに身辺整理をしておく

身辺整理は、遺品整理や不用品の廃棄の手間や費用を削減して、死後事務委任契約で委託する死後の手続きを速やかに進めるために、とても大切な取り組みです。

契約書などの大事な書類や印鑑などの必要品が発見しやすいように、きちんと整理して保管しておきましょう。

遺品整理には専門業者もありますが、清掃や不用品の廃棄は100万円以上の費用がかかるケースもあり、契約相手や保証人へ迷惑をかけることにもなりかねません。

健康なうちに身辺整理をして掃除をしやすい環境を整えておくと、高齢になってからも掃除がしやすく、衛生的に暮らすこともできます。

死後事務委任契約の詳細や希望はエンディングノートへ記しておく

死後事務委任契約の詳細は、生前のうちにエンディングノートへ記しておくと、契約相手にとって必要なことを把握しやすく、自分自身の備忘録としてもおすすめです。

エンディングノートには、万一のときに訃報連絡をしてほしい人たちや、必要な手続きを上手にまとめることができ、遺書の代わりに希望やメッセージを書き残しておくこともできます。

契約相手や内容によってはお願いごとを叶えてくれる可能性があるほか、いざエンディングノートへ記載してみると、人生を振り返るきっかけにもなり、今後の生活にも役立つでしょう。

なお、エンディングノートは書店などで市販されているほか、法務局や市町村役場のホームページからダウンロードすることができます。

参考:エンディングノート(法務省)

葬儀や納骨先の生前予約をしておく

死後事務委任契約にあたっては、自分の希望どおりの葬儀やお墓への納骨ができるよう、生前予約を済ませておきましょう

葬儀社や葬儀プランは豊富な種類があり、火葬のみを行う直葬プランなら、10〜20万円程度が相場となっていますが、身寄りのない方でも理想の葬儀を行うことは可能です。

親族や友人や知人を招いて家族葬を行うことや、こだわりのお葬式を実現できるため、希望のある方は、生前のうちに葬儀社へ相談をして検討しておくと安心です。

またお墓においては近年、身寄りのない方でも遺骨の管理と供養をしてもらえる永代供養墓が人気を集めています。

永代供養墓は約5〜150万円程度と相場が幅広く、さまざまな種類があるため、快適なお墓で眠れるよう、立地や環境などを事前に見学して生前予約しておくことをおすすめします。

なお、葬儀やお墓にかかる費用の生前の支払いは、死後の相続税対策としておすすめで、相続財産から控除できない次のような品目にも有効となります。

  • ・香典返しのためにかかった費用
  • ・墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
  • ・初七日や法事などのためにかかった費用

出典:相続財産から控除できる葬式費用(国税庁)

死後事務委任契約をしたら周囲に伝えておく

死後事務委任契約を行ったら、親族や友人・知人などへきちんと報告して、周囲でトラブルが起こらないようにしましょう

もしも死後事務委任契約の事実を知らない人が、善意で死後に必要な手続きをしてくれようとした際に問題が生じてしまう可能性があります。

住まいの管理人や介護施設、入院先の病院をはじめ、親戚や身近な人たちへは伝えるようにしてください。

死後事務委任契約でできること10項目

葬儀代行

死後事務委任契約によって約束しておけば、次のような10項目を委ねることができます

  1. ①死亡後の手続き
  2. ②親族や友人・知人への連絡
  3. ③葬儀や納骨の手続き
  4. ④家賃や公共料金や医療費などの精算
  5. ⑤公的手続き
  6. ⑥税金関連の手続き
  7. ⑦自宅の清掃や遺品整理
  8. ⑧ペットの引き継ぎ先の指定
  9. ⑨利用サービスの解約・退会手続き
  10. ⑩デジタル遺品の処理

①死亡後の手続き

死後事務委任契約で死亡後の手続きを依頼しておけば、死後の必要な役所手続きを遂行してもらえます。なお、死後は次の4つの順序で手続きが必要となります。

  1. 1.病院または警察:死亡診断書または死体検案書を入手
  2. 2.役所:死亡届と埋火葬許可申請書の提出により埋火葬許可証を取得
  3. 3.火葬場:火葬許可証の提出
  4. 4.納骨先:埋葬許可証の提出

人は亡くなると、病院や警察で死亡確認が行われます。この際、死亡診断書または死体検案書が発行され、これらの書類は役所へ提出する死亡届と一体になっています。

参考:死亡届(法務省)

死亡届は死亡の事実を知ってから7日以内(国外は3ヶ月以内)に役所へ提出しなければならず、火葬場では火葬許可証、霊園・墓地では埋葬許可証の提出が必要です。

参考:墓地、埋葬等に関する法律(厚生労働省)

②親族や友人・知人への連絡

死後事務委任契約により、あらかじめ訃報連絡の依頼をしておけば、親族や友人・知人などへ不幸があったことを伝えることができます

親戚付き合いがない方でも、万一のときは連絡をしてもらえるため、安心できるでしょう。

③葬儀や納骨の手続き

死後事務委任契約によって、葬儀や納骨の手続きを依頼しておくことで、葬儀や火葬後の納骨手続きを遂行してもらえます

最良なのは、生前のうちに葬儀や納骨先の生前予約を済ませておき、その契約プランを実行してもらう方法です。

なお、子どものいないご夫婦で、配偶者が納骨されているお墓へ一緒に納骨してもらう場合にも死後事務委任契約が必要となります。

④家賃や公共料金や医療費などの精算

死後事務委任契約で必要な支払い費用の精算を依頼することにより、家賃や光熱費などの公共料金、医療費などを精算してもらえます。

なお、万一の場合の身元引き受けや費用の精算のため、賃貸住宅への入居時や介護施設への入所時、病院への入院時などには身元保証人が必要となるケースが多いです。

身元保証人と同等の契約内容で死後事務委任契約を行っていれば、身元保証人が免除されるケースもあるため、契約時に相談してみましょう。

どうしても身元保証人が必要な場合、死後事務委任契約の受任者は身元保証人にはなれないため、死後事務委任契約の締結と並行して、身元保証人を探すことをおすすめします。

⑤公的手続き

死後事務委任契約では、死後に必要な公的手続きを依頼することができます

死後は死亡届や火葬・納骨以外にも、健康保険や年金などについて役所や年金事務所での事務処理が必要となり、一般的に次のような公的手続きが必要です。

  • ・健康保険資格喪失届の提出:役所など
  • ・介護保険資格喪失届の提出:役所
  • ・年金受給の停止:年金事務所
  • ・運転免許証の返却:警察署(返却不要な地域もある)
  • ・パスポートの返却:パスポートセンター

マイナンバーカードの個人登録が行われていることで、死後の手続きが省略できるメリットもあります。

出典:年金を受けている方が亡くなったとき(日本年金機構)

なお、葬儀費用や納骨費用を負担した人へは、申告によって加入する健康保険や地域の自治体から、3~7万円程度の葬祭費や埋葬料(埋葬費)を受け取ることが可能です。

⑥税金関連の手続き

死後事務委任契約では、税金関連の手続きも依頼することが可能です。

亡くなった人の税金は、死後も支払い義務があり、市民税・県民税などの住民税の支払いや、所得税の準確定申告は、相続人が対処することが義務付けられています。

出典:納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)(国税庁)

所得税・住民税・固定資産税・自動車重量税といった税金は、滞納している場合の延滞金も相続人に支払い義務が生じる仕組みです。

また、相続人は家族以外にも、兄弟姉妹、甥や姪が対象になるケースや、離婚をしていても実子が対象になる場合があるためご注意ください。

出典:相続人の範囲と法定相続分(国税庁)

⑦自宅の清掃や遺品整理

死後事務委任契約では、死後の自宅の清掃や遺品整理を依頼することができ、これらは賃貸住宅や介護施設の入居時や、病院への入院時に契約として求められる場合もあります

最小限の必需品のみで生活している荷物が少ない方も清掃や荷物の撤去は必要となるため、死後事務委任契約に盛り込んでおくと、万一のときに周囲に迷惑をかけることなく安心です。

⑧ペットの引き継ぎ先の指定

犬猫などのペットを飼育している方は、死後事務委任契約によってペットの引き継ぎ先を指定しておくようにしましょう。

ただし、預け先は生前のうちに決めておき、ペット保護施設などの場合は、費用を支払って契約を済ませておくことが必要です。

ペットを引き取ってくれる人に死後事務委任契約の受任者となる依頼をする方法もあるため、愛犬・愛猫のために、より良い選択肢をご検討ください。

⑨利用サービスの解約・退会手続き

死後事務委任契約では、自分が亡くなった後、次のような利用サービスの解約・退会手続きをしてもらうことができます

  • ・賃貸住宅などの住まい
  • ・介護サービス
  • ・電気・水道・ガス
  • ・NHKなどの放送受信契約
  • ・クレジットカード
  • ・携帯電話・固定電話・プロバイダー
  • ・会員や習い事などの利用サービス

利用サービスの料金は解約や退会手続きをしないと課金対象となるため、気をつけましょう。

⑩デジタル遺品の処理

死後事務委任契約では、スマートフォンやパソコンなどの端末や、SNSやブログなどのインターネットにおいて、写真や個人情報の削除、退会手続きなどを依頼できます

最新の調査結果によると、終活ですることや興味があることのうち、デジタル遺品の処理に関しては、以下のとおり3位にランキングしています。

出典:終活に関する調査(楽天インサイト)

  • 1位:家の中の荷物整理 46.8%
  • 2位:財産整理 32.2%
  • 3位:パソコンやスマートフォンなどのデータ整理 27.5%

なお、端末やインターネット関連の手続きでは、IDやパスワードのログイン情報が必要になるため、きちんとリスト化しておきましょう。

まとめ:弘善社は死後事務委任契約による葬儀から納骨まで対応!

死後事務委任契約に向いている人や、委任契約できることと注意点についてご紹介しましたが、まとめると次のとおりです。

  • ・死後事務委任契約とは、自分の死後に必要な事務手続きを法的に第三者へ委任して、代行してもらえる契約のことをいい、親族や友人・知人、司法書士や弁護士などと締結する。
  • ・死後事務委任契約は、独身や子どものいない人や、頼れる身内がいない人のほか、家族や親族に負担をかけたくない人や、自分自身の力で人生を全うしたい人にも向いている。
  • ・死後事務委任契約では注意点があり、生前に必要なことや財産に関することは含められず、あらかじめ身辺整理やエンディングノート、葬儀や納骨先の準備をして、契約後は周囲に伝えておく必要がある。
  • ・死後事務委任契約では、死後に必要な次の手続きが依頼できる。①死亡後の手続き ②親族や友人・知人への連絡 ③葬儀や納骨の手続き ④家賃や公共料金や医療費などの精算 ⑤公的手続き ⑥税金関連の手続き ⑦自宅の清掃や遺品整理 ⑧ペットの引き継ぎ先の指定 ⑨利用サービスの解約・退会手続き ⑩デジタル遺品の処理

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