お葬式のこと

グリーフについて考える

先日、シニアライフカウンセラー養成講座の講師を務めてきました。今回は上級講座だったのですが、その中で「グリーフ」のお話しをさせていただきました。

cocodeからみた風景。まだ残雪が多いです。

  「グリーフ」… 聞きなれない言葉ですよね。 今回はグリーフの意味とそれにまつわることをお話しいたします。  

グリーフワークとグリーフケア

  グリーフ(grief)とは、「深い悲しみ」の意味です。大切な人やものを失うことによって生まれてくる、その人なりの自然な反応や感情、プロセスのこと。 「グリーフワーク」は、深い悲しみに陥った人が立ち直るまでに行う心の作業。喪の作業。癒しの作業のことです。 「グリーフケア」は、悲しみや不安にある人に対して心から配慮して係わること。 葬儀は遺族の心の深い悲しみを思いやり、グリーフワークに役立つものと解釈されています。このためには死別によって引き起こされる悲しみはどんなものかを知る必要があります。死別の「悲嘆のプロセス」と言われるものをご説明しますね。  

<死別の悲嘆のプロセス>

亡くなる人と深い愛情関係に結ばれていた家族、あるいは、突然の死に出会った家族が、死と対面して起こるプロセスは次のように理解されています。

①第一段階 衝撃

ショックを受けて取り乱す人、あるいはショックによって現実感覚が一時麻痺状態に陥る人がいます。表面的には平静ですが、内面ではショックを受けており、平静状態と呆然状態が交互に現れる例もあります。

②第二段階 否認

死亡の事実そのものを認めず、きっとどこかに生きていると思い込んでいたり、あるいは、死亡の事実は一応客観的に認識してはいるものの、主観的にはまだ生きているという想いが行き来している状態です。

③第三段階 パニックや怒り

自分が制御できなくなりパニック状態に陥ったり、あるいは理不尽で不当な運命に対して激しい怒りが生じます。この怒りを抑制したり、内にとどめておくと、怒りは反転して自分に向かい、事故破壊に陥ったり、心身の健康を損なったりする危険があります。 また、周囲の人々や死者に対して敵意の感情を抱いたり、死者に対する自分の過去の行為を悔い、「あんなことしなければよかった」「ああすればよかった」と罪の意識に苛まれることがあります。

④第四段階 抑鬱と精神的混乱

空想の中で死者がまだ生きていると思い込んで、そのように実生活でも振る舞ったり、孤独感に襲われて人間嫌いになったり、気が沈んで引きこもってしまったりします。また、やる気を失い、何をしていいかわからない状態になることがあります。

⑤第五段階 死別の受容

辛い現実を見つめ、死の事実を受け入れようとし、ユーモアや笑いを取り戻すことにより、悲しみから立ち上がる状態です。 もちろん、全ての人がこれらの段階をそのまま辿るとは決まっていません。また、言葉で「悲しみ」と表現しても、死別の悲しみの現れ方は多様です。しかもこれは死別に出会った人が陥る自然な心理状態であって、決して病気ではないということを理解する必要があります。人の死とは、愛する人にとって心を揺り動かすほどの大変な出来事なのです。

<悲嘆の処理に失敗する危険>

多くの人は葬儀、四十九日、百か日、一周忌という喪のステージ(段階、場面)を踏むにつれて、悲しみの状態を乗り越えて、日常生活に復帰できる状態になります。かつての喪のステージは、死別した遺族の心情に合致したからこそ受け入れられたシステムだったと言えるかもしれません。 しかし、全ての人がこうした辛い悲しみの営みを無事通過できるとは限りません。悲しみを無理に抑制することにより、心身に異常をきたして心身症に陥ったり、いつまでも悲しみの状態にとどまったり、あるいは自己破壊から自殺衝動に走ったりする危険性があります。 その兆候は、悲しみ、怒り、敵意を一切表現しなかったり、異常な寡黙状態に陥ったり、重篤な睡眠障害に陥ったり、自尊心が失われたり、罪意識をもつ対象が死者以外のものにまで広がったりすることに表れます。こうした状態に陥った場合、精神科医などの専門家の診療を受ける必要があります。

<ケアの原則>

①事実を見つめる

「早く忘れなさい」「がんばって」「しっかり」という言葉は避けたほうがよいと言われています。励ましているのではなく、負担が大きくなります。悲しみのある人に、悲しい事実を忘れることを強いるのは、一般にマイナスになります。むしろ悲しい事実をみつめる事が大切です。 悲しみの状態を理解してあげることが必要です。

②話を聞く(傾聴)

同じ目線にたって聞く。アドバイスではない。無理にはしない。 悲しみのある人に大切なのは、説教したり、助言したりすることではありません。同じ目線に立って、その人の想いを静かに聞いてあげることです。しかし、無理して話をさせることは逆効果になることもあります。相手が話ししたいときに、その人の想いを吐き出させ、怒りに対しても遮るのではなく、その怒りを発散させる事が必要です。

③悲しみを避けない

葬送に関することで言えば、死者に会わせない、火葬場に行かせない等というのは、配慮ではなく現実を受け入れられなくなる結果になることもあります。 子供を交通事故で亡くした親に、かわいそうだからと傷ついた子供に会わせない、あるいは残酷すぎるからと火葬場にいかせない、などというのは周りの配慮から出る行動ですが、時折、これが逆効果になり、死の現実をなかなか受け入れられない結果になることがあります。 本人が望むのであれば、遮らず、辛い現実であっても対面させる事が大切です。親を亡くした子供にも「長い旅行に出た」「お星様になった」と現実をあいまいにして説明するのではなく、子供が真実を知ることを望むなら「死亡した事実」をきちんと説明すべきです。 親を失った子供は、死の悲しみを論理的に表現できないことがあります。しかし感情としては理解しており、不安・悲しみが行動などに様々な形で現れ、情緒が不安定になったり、暴力的になったり、落ち着きを失ったりします。注意して見守る必要があり、悲しみを表現させる努力が必要です。

④事務的処理の負担をかけない

負担になるなら代行する。しかし無理に引き離すとマイナスになる。 もし死後の事務的な処理が煩雑で、負担になるようでしたら、周囲の人が代行して、その人の気持ちの負担を軽減してあげることは大切なことです。しかし、もしその人が、それをすることを心から望むならば、代行を申し出ることがあっても、無理矢理その仕事から引き離すことはマイナスになることがあります。

⑤笑うこと、休息は不謹慎ではない

本人が自然に行うことであれば必要なことです。 悲しみにある人が通夜や葬儀の場で他人の冗談に笑っても、疲れて休息を取っても「不謹慎である」と非難してはいけません。本人が自然に行うことであれば、悲しみというストレスには、笑い、ユーモア、休息は必要なことである、と理解すべきです。

⑥一人にしない

孤独感が強い、周りの人に敵意を抱く、そんな状態のとき大切なことは気をつけて側にいてあげることです。監視するのではなく、その人の側に静かに寄り添ってあげることが必要です。

⑦自分の悲しみの体験を分かち合う

ケアする人が、家族の死に出会った体験を持っているのであれば、自分の体験した悲しみを思い起こし、その気持ちを大切にして相手に接することで、しばしば共感しあうことができます。また、そうした体験の無い人も自分の場合のことを想像して、その立場で接すると良いでしょう。   ※葬儀はグリーフケアの機能があると言われます。それは葬儀のもち方、係わる者の態度が適切だったときです。反対にグリーフワークを阻害することもあります。 ※いわゆる直葬など何もしない葬儀の場合や本人の希望の形と、家族や親しい人の希望する形が違う場合、残された人々が死をきちんと受け入れることができるのか、心配な部分があります。   いかがでしたか? ボク自身は、グリーフとは、「心の在りよう」「亡くなった事実に対する捉え方」だと思うのです。 「亡くなった」ことは事実。 でも事実に対して、捉え方は人それぞれ千差万別です。たとえ家族間であっても同じとは限りません。そしてその捉え方は「全て正しい」のです…。 ケアをしようとするならば、まずそこを認識しなければならないと思います。 そして一番大事なのは、アドバイスをすることではなく、「傾聴」することだと思います。 グリーフは最終的には本人が本人の力で解決しなければなりません。であれば、傾聴してあげて、アドバイスを求められればそこで初めてアドバイスしてあげる。 そんなスタンスが大事なのかな、って思います。

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